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「ストレスチェックの目的は何ですか?」
結論から言うと、ストレスチェックの最大の目的は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」です。労働安全衛生法にもとづき、2015年12月から50人以上の事業場で実施が義務づけられています。
ただ、「法律で決まっているから」「メンタルヘルス対策の一環だから」という説明だけでは、腑に落ちない人も多いでしょう。実際、現場では次のような声もよく聞かれます。
この記事では、国が示す3つの目的と、その奥にある制度の本質を解説します。義務化の背景や、従業員・企業それぞれのメリットもあわせて紹介します。
ストレスチェックとは、従業員が質問票に答えることで、自分のストレスの状態を調べる検査です。労働安全衛生法第66条の10にもとづく制度で、2015年12月から始まりました。
実施が義務づけられているのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。年1回以上の実施が必要で、所轄の労働基準監督署への結果報告も求められます。2028年4月1日からは、50人未満の事業場も義務化の対象になります。
対象となるのは「常時使用する労働者」です。契約期間の定めがない、または1年以上雇用される見込みがあり、週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上の人が該当します。
質問票は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」が広く使われています。実施者は医師や保健師などの専門職が務め、結果は本人に直接通知されます。本人の同意なく、会社が個人の結果を知ることはできません。
なお、会社には実施義務がありますが、従業員に受検の義務はありません。だからこそ、目的を丁寧に伝えて受検を促すことが大切です。
厚生労働省のマニュアルでは、メンタル不調の未然防止(一次予防)を主な目的としています。その中身は、次の3つに整理できます。
ここまでが、制度として説明されるストレスチェックの目的です。
これらの説明に「なるほど」とは思えても、心から納得できない人は少なくありません。なぜなら現場では、
といった状況が多く、目的と現実が結びついていないからです。
その結果、「ストレスチェックは意味がない」と受け止められてしまいます。ただし、問題は目的そのものではなく、目的の“捉え方”が浅いことにあります。
では、ストレスチェックの本質的な目的とは何なのでしょうか。
まず明確にしておくべきなのは、
ストレスチェックは人を評価したり、選別したりする制度ではないという点です。
「ストレスに弱い人を見つける」
「問題のある社員を特定する」
こうした目的で使われる制度ではありません。
ストレスチェックの設計思想の中心にあるのは、個人ではなく、職場そのものです。
多くのストレスは、個人の性格や能力ではなく、
といった職場の構造から生まれます。そのため制度には、結果を部署ごとに集計・分析する「集団分析」が組み込まれています。集団分析は企業の努力義務ですが、職場改善の出発点となる重要な取り組みです。
集団分析を見ることで、
といった傾向が見えてきます。これは「誰が悪いか」ではなく、「どこに無理が生じているか」を知るための情報です。
つまり、ストレスチェックの本質的な目的は、人が無理をし続けなければならない職場の状態に気づくことにあります。
ストレスチェック制度は、2014年の労働安全衛生法改正で創設され、2015年12月に施行されました。では、なぜ国は企業に実施を義務づけたのでしょうか。
メンタルヘルス不調は、
といった形で、企業や社会全体に影響を及ぼします。やっかいなのは、不調が表面化した時点で、すでに深刻化しているケースが多いことです。
そこで国が重視したのが、不調が起きる前に気づく「一次予防」です。従来の対策は、早期発見・早期対応(二次予防)や職場復帰支援(三次予防)が中心でした。ストレスチェックは、その手前で気づくための仕組みとして位置づけられています。
個人や一企業の問題にとどめず、社会全体の損失を抑える。それも、ストレスチェックが義務化された大きな背景です。
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった50人未満の事業場も、ストレスチェックが義務化されます。施行日は2028年4月1日です。
法改正の背景には、事業場の規模にかかわらず、メンタル不調の未然防止と職場環境の改善を進めたいという国の狙いがあります。義務化の拡大は、「一次予防」という目的をすべての働く人に届けるための動きといえます。
義務化の対象範囲や、今から準備すべきことは「ストレスチェック義務化とは?」の記事で詳しく解説しています。
これは、従業員自身を守るための制度です。
企業にとっては、経営上のリスク管理でもあります。
ストレスチェックは、個人・企業・社会をつなぐ制度でもあります。
目的を「アンケートを実施すること」だと捉えると、ストレスチェックは形骸化します。
しかし、
という視点で見ると、ストレスチェックは組織を変える起点になります。
ストレスチェックの目的は、実施の各段階とつながっています。流れと目的の対応を押さえておきましょう。
衛生委員会で、実施体制や結果の取扱いなどを話し合い、社内規程を定めます。実施の目的を従業員に事前に伝えることが、本音の回答につながります。
従業員に質問票へ回答してもらいます。実施の事務に関わる担当者には、法律で守秘義務が課されています。
結果は、実施者から本人に直接届きます。「従業員が自分のストレスに気づく」という目的を果たす段階です。
高ストレスと判定され、本人が申し出た場合は、医師が面接指導を行います。会社は医師の意見を聞き、必要に応じて労働時間の短縮などの措置を講じます。
結果を部署ごとに集計・分析し、改善策を実行します。「職場環境の改善」という目的を果たす、最も重要な段階です。集団分析は努力義務ですが、2027年4月1日からは、個人を特定できない方法で行うことが省令で明記されます。
ストレスチェックの目的は、従業員のメンタル不調を未然に防ぐ「一次予防」です。そのために、本人の気づきと職場環境の改善という2つの柱があります。ストレスを測ること自体が目的ではありません。
測定を通じて、気づき、職場を見直すこと。
この本質を理解できたとき、ストレスチェックは「やらされる制度」から「意味のある仕組み」へと変わります。
健康診断は、病気の早期発見などを目的としています。一方、ストレスチェックの主な目的は、不調を未然に防ぐ一次予防です。また、健康診断は従業員にも受診義務がありますが、ストレスチェックには受検義務がありません。
いいえ。ストレスチェックは、病気の診断を目的とした検査ではありません。ストレスの状態に気づき、不調を防ぐための検査です。
本人の同意がなければ、会社が個人の結果を知ることはできません。結果を理由に、解雇や不当な配置転換などの不利益な扱いをすることも禁じられています。
実施しないこと自体への罰則はありません。ただし、50人以上の事業場では労働基準監督署への報告が義務で、報告を怠ると罰則の対象になりえます。

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