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健康経営を推進する上で、「プレゼンティーイズム(Presenteeism)」の理解は不可欠です。これは、従業員が出勤していても、体調不良やメンタル不調により本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。欠勤を意味する「アブセンティーイズム」とは異なり、外からは見えづらい「隠れた生産性損失」として、企業に大きな影響を与えます。そのものウェルネスプログラム(SWP)では、このプレゼンティーイズムを可視化する指標として、SPQ(Single-item Presenteeism Question)を採用しています。
SPQは、たった1つの質問でプレゼンティーイズム(=生産性損失)を数値化できる、シンプルかつ効果的な評価指標です。質問は以下の通りです。
「病気やけがの影響を考慮したうえで、理想的なパフォーマンスを100%としたとき、過去4週間のあなたの仕事のパフォーマンスは何%でしたか?」
従業員は1~100%の間で自己評価します。(100-回答値)を計算することで、プレゼンティーイズム率(=生産性損失率)として算出可能です。
| 回答 | 意味 | 生産性損失(SPQスコア) |
|---|---|---|
| 100% | パフォーマンス完全発揮 | 0%(損失なし) |
| 80% | 2割パフォーマンス低下 | 20%の損失 |
| 60% | 大幅な業務効率低下 | 40%の損失 |
このように、個々のパフォーマンス状態を定量的に把握し、改善に向けた第一歩を踏み出せます。
東京大学の研究チームによる検証では、SPQは以下の点で高い信頼性と実用性が示されています。

日本における調査では、プレゼンティーイズムによる損失は、従業員1人あたり年間約50万円以上にものぼるとされています(健康関連コスト全体の77.9%に相当)。
これは欠勤(4.4%)による損失や医療費(15.7%)をはるかに上回る水準です。
企業にとって、プレゼンティーイズムを軽視することは、生産性の低下や経営損失に直結しかねないのです。

| 項目 | 平均(円) | 割合(%) |
|---|---|---|
| 2014年度医療費 | 113,928 | 15.7% |
| 労災給付金 | 6,870 | 0.9% |
| 傷病手当金支給額 | 7,328 | 1.0% |
| アブセンティーイズム (アンケート) | 31,778 | 4.4% |
| 相対的プレゼンティーイズム | 564,963 | 77.9% |
| 計 | 724,868 | 100% |
そのものウェルネスプログラムでは、定期的なSPQの実施を通じて従業員のパフォーマンス率の変化を把握し、以下の可視化と分析を行います。
これらの取り組みを通じて、生産性向上と従業員支援の両立を目指し、持続可能な健康経営をサポートします。
プレゼンティーイズムと混同されやすい言葉に「アブセンティーイズム(Absenteeism)」があります。
アブセンティーイズムとは、従業員が体調不良やメンタル不調により、欠勤、遅刻、早退、休職などで仕事ができない状態を指します。これは勤怠管理によって可視化されやすく、企業にとっての損失も比較的把握しやすいのが特徴です。
一方、プレゼンティーイズムは出勤しているため、その損失が見えにくいという違いがあります。健康経営では、この両方の損失を総合的に捉え、従業員の健康をサポートすることが重要です。
プレゼンティーイズムは目に見えにくい損失であるため、客観的に把握するためには適切な測定方法を用いることが重要です。SPQ以外にも、いくつかの測定方法が存在します。
WHO-HPQは、世界保健機関(WHO)が開発した、従業員の健康と仕事のパフォーマンスを測定するための質問票です。3つの設問で構成されており、健康問題が仕事に与える影響を多角的に評価できます。
WLQは、タフツ大学医学部が開発した質問票で、仕事の制限を「時間管理」「身体活動」「集中力・対人関係」「仕事の結果」の4つの側面から計25問で評価します。パフォーマンス低下の原因や特徴を詳細に把握できるのが特徴です。
WFunは、産業医科大学が開発した7つの設問からなる質問票で、体調不良などによる労働機能障害の程度を測定します。簡便性と信頼性を兼ね備えています。
従業員のパフォーマンス低下を招くプレゼンティーイズムには、様々な原因が潜んでいます。ここでは、厚生労働省のレポートなどを参考に、主な原因となる健康問題を具体的に解説します。
現代のオフィスワークでは、長時間同じ姿勢での作業やPC・スマートフォンの使用が常態化しています。これにより、肩こり、腰痛、眼精疲労、頭痛(特に片頭痛)といった運動器や感覚器の不調を訴える従業員が増加しています。これらの症状は、集中力の低下や作業効率の悪化に直結し、プレゼンティーイズムの大きな原因となります。
人間関係のストレス、仕事のプレッシャー、長時間労働などは、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。うつ病や適応障害といった精神疾患だけでなく、慢性的なストレスによる不眠、不安感、集中力低下などもプレゼンティーイズムの原因です。メンタル不調は、本人が気づきにくい場合も多く、早期発見と適切なケアが重要となります。
高血圧、糖尿病などの生活習慣病は、自覚症状が少なくても体力を奪い、集中力を低下させることがあります。また、胃腸の不調(便秘、下痢)、アレルギー(花粉症など)、月経前症候群(PMS)や更年期障害といった女性特有の症状も、日々の業務パフォーマンスに大きく影響します。これらの身体的な不調も、プレゼンティーイズムの重要な原因として認識し、対策を講じる必要があります。
プレゼンティーイズムの改善は、従業員個人の健康だけでなく、企業全体に多大なメリットをもたらします。ここでは、主なメリットを3つご紹介します。
従業員が心身ともに健康な状態で業務に取り組めば、集中力やモチベーションが向上し、業務効率が大幅に改善されます。これにより、ケアレスミスが減り、質の高い成果を生み出すことが可能になります。結果として、組織全体の生産性が向上し、企業の収益アップに直結するでしょう。
企業が従業員の健康を重視し、具体的なサポートを行うことで、従業員は「大切にされている」と感じ、企業への信頼感や愛着(エンゲージメント)が高まります。健康問題が原因で離職を考える従業員も少なくないため、プレゼンティーイズムの改善は、離職率の低下と優秀な人材の定着にもつながります。
健康経営に取り組む企業は、社会的な評価が高まり、企業イメージが向上します。これは、採用活動においても大きなアドバンテージとなり、健康意識の高い優秀な人材を惹きつけることにつながります。従業員の健康を大切にする企業文化は、持続的な成長の基盤となるでしょう。
プレゼンティーイズムの改善には、原因を特定し、多角的なアプローチで対策を講じることが重要です。ここでは、企業が取り組むべき具体的な施策をご紹介します。
健康診断やストレスチェックの定期的な実施はもちろん、SPQのような簡易的な質問票を活用し、従業員の心身の不調を早期に発見することが重要です。不調の兆候が見られた場合は、産業医や保健師との面談、専門機関への紹介など、速やかに適切なサポートを提供できる体制を整えましょう。
長時間労働の是正、適切な休憩時間の確保、柔軟な働き方(テレワーク、フレックスタイムなど)の導入は、従業員のストレス軽減に繋がります。また、人間工学に基づいたオフィス家具の導入、適切な照明や温度管理、リフレッシュスペースの設置など、物理的な職場環境の改善も、運動器・感覚器の不調対策として有効です。
従業員一人ひとりが自身の健康に関心を持ち、適切なセルフケアができるよう、健康に関する情報提供や教育機会を設けることが大切です。例えば、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、質の良い睡眠に関するセミナーの開催や、腸活など具体的な健康習慣をサポートするプログラムの導入も効果的です。
上司と部下、同僚間の円滑なコミュニケーションは、メンタルヘルスの不調予防に不可欠です。定期的な1on1ミーティングの実施や、気軽に相談できる窓口の設置、ハラスメント対策の徹底などにより、従業員が安心して働ける心理的安全性の高い職場環境を構築しましょう。
本記事では、プレゼンティーイズムの定義から、企業に与える損失、具体的な原因、そして改善策までを詳しく解説しました。従業員の心身の不調は、目に見えない形で企業の生産性を低下させ、経営に大きな影響を与えます。健康経営は、単なるコストではなく、将来の収益性を高めるための重要な投資です。
プレゼンティーイズム対策を通じて、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる職場環境を整え、持続可能な企業成長を目指しましょう。

従業員の健康意識と
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